UpperWave

「視覚障害者以外にも有用なものを」誰もが快適に使える誘導路「歩導くん ガイドウェイ」の開発秘話

視覚障害者が屋内外を安全に通行するのに欠かせない情報源となっているのが、点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)をはじめとする誘導路です。

しかし、建築基準法で定められた最低限度の誘導路が設置されている場所は多い一方で、建物内の誘導路の設置にはさまざまな障壁があります。

そんななか「誰でも安心して利用できる誘導路を」という思いで開発されたのが、錦城護謨の誘導マット「歩導くんシリーズ」。従来の誘導ブロックのつまずきやすさや歩きにくさを解消し、視覚障害者だけでなく車椅子、ベビーカー、お年寄り、歩行者と誰もが安心して歩けるように配慮された誘導路です。

当事者自身の経験と想いが「歩導くんシリーズ」開発のきっかけに

そもそも歩導くんシリーズが誕生したきっかけは、とある視覚障害当事者の経験でした。60歳で視力を失ったその方は、行く先々で誘導路がないことによる不自由さを実感したといいます。

たとえば、病院を訪れたとき。病院内には誘導路がなかったため、「ちょっとトイレにいきたいな」と思っただけでも、誰かにわざわざ声をかける必要に迫られたのです。

「誘導路が設置されていれば、自分ひとりでも歩けるのに……」

しかし、凹凸のある誘導路の設置は、車椅子や移動式ベッド、ベビーカーでのスムーズな移動を妨げる要因になるという側面もあり、実際に設置してもらうことはできませんでした。

そこで「視覚障害者に限らずどんな方でも使いやすい製品なら、より多くの施設に誘導路を設置してもらえるのではないか?」という仮説のもと、「誰でも安心して利用できる誘導路を」という思いで歩導くんを考案。視覚支援学校や障害者協会などの協力のもと、開発の実現に至りました。

目指したのは、みんなが安心して使える誘導路の開発と設置

それまで、屋内施設における誘導路設置の障壁のひとつには、「視覚障害者にしかメリットのないものは採用されにくい」ということがありました。

たとえば、病院のように車椅子や点滴スタンドを引いての通行が多い場所では、移動の際に誘導ブロックの凹凸が引っかかる、大きく振動するといった問題が生じます。ほかにも誘導路の種類によっては、濡れると滑りやすくなってしまうリスクや、弱視の人でも認識しやすい色がないといったカラーバリエーションの課題もありました。

こういった理由から誘導路の導入がなかなか進まない状況を打破すべく、歩導くんシリーズは「視覚障害者以外にも有用なもの」をコンセプトに開発されました。

「歩導くん」はクッション性のある特殊ゴム素材でつくることで従来の凹凸をなくし、車椅子やベビーカー、シルバーカー、ヒールを履いた方やお子さんでもつまづきにくくすることに成功。視覚障害者の方に限らず、誰もが安全かつスムーズに移動できる製品に仕上げました。

なお視覚障害者の方には、凹凸のかわりに白杖で叩いたときの音や、足裏に伝わるゴムの質感、白杖から手に伝わるざらざらとした感触でその存在を知らせます。

こうして視覚障害者の方に限らず誰もが安心して使える誘導路を開発したことによって、病院や銀行、商業施設などさまざまな場所での導入に至りました。

特注カラーで建築デザイナーの細かな要望に応える「歩導くん ガイドウェイ」

同シリーズのなかでも、2015年に発売となった「歩導くん ガイドウェイ」は、約1年をかけて改良を重ねた製品です。

同製品は表面の加工によって、さらなる水濡れ時の滑りにくさ・汚れにくさを実現。さらに、熱融着シールによる文字や矢印の表示(ピクトグラム)をも可能にしました。ドットでの文字表現や矢印、トイレマーク、インフォメーションマークなどの作成ができるようになったことで、より多くの方の誘導に役立ってくれます。

デザイン性の高さとバラエティに富んだカラー展開も大きな特徴です。床や空間との彩度差・輝度比をとることで、視覚障害者の多くを占める「弱視」の方でも視認しやすくなっています。

また100色以上にものぼる豊富なカラー展開によって、建築デザイナーの細かな要望に対応できるようになったというメリットも。誘導路の色と空間のイメージの統一という、それまで建築デザイナーの頭を悩ませてきた課題を解決に導きました。「歩導くん ガイドウェイ」なら、建物や館内のイメージを損なうことなく、空間構成とバリアフリーの調和を実現します。

さらに2022年夏には、新色としてニュアンスカラー5色を新たに展開予定。プロダクトやインテリアのトレンドである中間色に合わせやすく、空間における誘導路の主張を抑えつつも輝度比を取りやすい色が追加されます。

空間に合う落ち着いたカラー展開で、美術館での設置も実現

機能性だけでなくデザイン性の高さも魅力の「歩導くん ガイドウェイ」をはじめとする歩導くんシリーズは、盲学校などにとどまらず、病院や銀行、役所、商業施設といったさまざまな場所で設置されています。

さらに静岡県にある複合文化施設「クレマチスの丘」の「ヴァンジ彫刻庭園美術館」のように、美術館でも導入されました。

「ヴァンジ彫刻庭園美術館」は美術館という特性上、館内全体の色バランスが重要であるとともに、企画展ごとに展示レイアウトが変更となります。そのため導入においては、ただ点字ブロックの代替品となるだけでなく、館内に合う色を選択でき、かつ移設可能な誘導路であることが求められました。

このような条件を満たすものとして、同施設では「歩導くん ガイドウェイ」の採用を決定。担当者の方からは、「展示品が主役となるような色合いでありながら、誘導ラインとしても認識できるものとなっている」と喜びのコメントがありました。視覚障害を持つ方からも「歩いたときの感覚が(同館の床部分と)違うのでわかりやすい」と好評だそうです。

「歩導くん ガイドウェイ」を設置している他施設においても、視覚障害者だけでなく車椅子や歩行者、お年寄りやお子さんなどみんなが安心かつ快適に利用できると評判です。

「歩導くんがあることで、今までひとりで行けなかった場所にも気軽に行けるようになったのが嬉しい」という視覚障害を持つ方のコメントも数多く寄せられました。

設置も容易な誘導路を通して、誰もが安心かつ快適に過ごせる施設づくりに貢献

「歩導くん」シリーズは床の上に両面テープで固定するため、施工において専用の工具や特別な技術は不要。

既存施設の場合は床の上にそのまま施工でき、短時間かつ容易なバリアフリー対応ができるのが魅力です。また、障害者スポーツ大会といったイベント会場など、短期間だけの設置も可能。

新築の場合は、床材を全て仕上げた後に一気に施工できるため、工期短縮にも効果があります。なお、床材と一緒に仕上げるはめ込み式タイプの「ガイドウェイタイル」の用意もあり、必要に応じて選択することができます。

障害の有無に関わらず、みんなが安心かつ快適に過ごせる施設づくりをお考えの方は、ぜひ「歩導くん」シリーズをご検討ください。

提供:錦城護謨株式会社

関連記事